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2008年6月の20周年記念公演「ロミオとジュリエット」 ロミオ役の奥村康祐、
ジュリエット役の倉永美沙に舞台評論家桜井多佳子氏がインタビュー。

インタビューを行ったのは5月末。倉永美沙がリハーサルのために一時帰国していたときだ。お互いを、「みいちゃん」「康ちゃん」と呼び合う二人の会話は笑いが絶えず、また舞台そのままの、「間」が絶妙だった。

−初めて二人が出会ったのは?

美沙 私が7歳で、康ちゃんが6歳。でも、あまり覚えていません。
康祐 そのときの発表会の写真に残っているから、そのはず。が、ほとんど記憶にありません(笑)。 お互いを認識したのは、9歳と10歳ぐらいのときですね。バレエの上手な女の子と思っていました(笑)
美沙 康ちゃん、小さいなって(笑)。トゥシューズで立つと、私のほうが頭二個分高かった。

−そんなお二人が昨年、久しぶりに一緒に組み、『パキータ』と『ロミオとジュリエット』を踊りました。

康祐 というか、本格的なパ・ド・ドゥをみいちゃんと踊るのは初めてでした。力強い踊りだと思いましたね。時々、そういえば、こういうことしていたな、と。動くときのタイミングが(小さい頃の)イメージどおりでした。手の使い方、動きがすごく柔らかくて、でも、すごく力強い。それがレベルアップしていました。

−幼馴染と久しぶりに踊るというのは恥ずかしくはないものですか?

美沙 ないです。ただ、『ロミオとジュリエット』というのは演技を要求されるので、演技の出来ない人と組むのは辛い。でも康ちゃんは、リハーサルのときから感情をしっかり込めて、演技も作っていくので踊りやすい。小さいときから感情を出せるタイプだと思っていました。それがバージョンアップしていた。
康祐 評価していただいて、ありがとうございます(笑)

倉永美沙

−今年は全幕を上演することになりました。どのように役を準備しましたか?

康祐 原作を読んで映画も見ました。ジュリエットと出会ったことで、人生が急に変わったロミオの成長や、感じ方の変化を表現したい。幕ごとにロミオの『感じ』が変わっていくように出来たら凄くいいなと思います。
美沙 昨年夏の休暇に、物語の舞台であるイタリアのベローナに行き、ジュリエットの家などを訪ねました。『ロミオとジュリエット』は、昔からあったお話をもとにしたフィクションですけど、中世のベローナでは、本当に二つの家が対立していました。現在、ジュリエットはとても崇拝されていて、そのお墓も大勢の人でいっぱい。ロミオの家も残っています。ベローナは舞台セットみたいな街。風景や建物も可愛らしい。

−ジュリエットを身近に感じたわけですね。康祐君はロミオに共感できますか? たとえば、親友のマキューシオを殺されたとき、仇のティボルトを殺してしまうのは理解できる?

康祐 はい。家族を殺されたから犯人を死刑にしたい、じゃないけれど、大切な人を殺されたらそういう気持ちが沸くと思う。若いから、やられたらやり返す。それ以外のことは考えられず、頭に血が上ってティボルトを殺してしまった。でも、殺した後は、どうしよう!そんなつもりじゃなかったのに、って。少年犯罪じゃないけど・・
奥村康祐

−中世が舞台の『ロミオとジュリエット』は、現代にも通じる、と。

康祐 バレエが、ただの古いものだったら見せる必要はないと思うんです。今でも生きているから、息づいているから、見る価値がある。それが、現代と全くかけ離れた歴史のなかの何かを見ているだけだったら共感は出来ません。本当に、いま、そこで起こっている出来事のように見せたい。
美沙 いいこと言うなぁ、康ちゃん。白状したね(笑)。いつもこういうのは秘めていて絶対言わないタイプ。だけど、考えているのだろうという予想はしていました。

三者で机を囲む

−ロミオに従兄弟のティボルトを殺されたときのジュリエットの感情も複雑ですね。

美沙 気が狂いそうになったでしょうね。この話はロマンティックに書かれていますが、たぶん実話は、とてもグロテスクだと思うんです。現代問題でいえば『殺し』。昔もいまも、それが身近に起こると精神的なプレッシャーが凄まじいほどかかります。この話にはパワーがある。ジュリエットはすごく意志が強い。10代だから視野も狭く、選択肢も少ないからストレートに行動できた、と言えるかもしれないけど、それで死というところまで行き着く実行力がある。ただ、可愛らしい女の子が恋愛して死にました、というようなフラットなお話にはならないように、強さというのも見せる必要は十分にあると思っています。同時に、たとえば怒りのなかにはどんな葛藤や戦いがあるのか、そんな複雑な心情も表現していきたい。心の変化も見せたいですね。

−ジュリエットはたくさんのヴァリエーション(Va)を踊りますが、どれが好きですか?

美沙 仮死薬を飲むシーン。これを飲んで成功するとロミオと結ばれる。でも失敗すれば死んでしまうかもしれない。とても怖いけど自分の幸せのために飲む。あのVaのなかには決断力、すごいパワーがあると思います。

−康祐君は?

康祐 どのバレエでも自分が最初に出て行くシーンが好きです。違う世界に飛び込む気持ちになって楽しい。まだそこまで出来ないんですけど、登場したときに皆を物語に引き込みたいんです。ただ、ロミオの登場シーンは難しい。物憂げで、でも主役のオーラを出しつつというのが。大切にしているシーンです。

−他に見どころは?

康祐 決闘シーンがかなり本格的になります。ここはポイントですね。

−マキューシオを殺したティボルトとロミオの決闘ですね。ティボルト役はゲストの福岡雄大君。

康祐 最初の稽古から雄大君は怖かった。凄い迫力で、眼つきも凄い。凄い力でどんどん進むんです。最初僕は、びびってしまいました。みいちゃんにも『ダサイ、ダサイ』って言われて。
美沙 康ちゃんはケンカを売るタイプじゃないから。
奥村康祐・倉永美沙

−でも小さいときにチャンバラごっことかしなかった?

康祐 しました。でも、その延長ではないんです。そんなスピードじゃない。雄大君、本当に怖いんです(笑)。でも、じつは結構お互い冷静にタイミングを計っています。雄大君とは仲が良いので意志疎通はできています。

−王子役のイメージが強い康祐君の、意外な面を見ることができる?

康祐 そうだと嬉しい。たしかに、ゲストに呼んでいただくときも王子役が多いんですけど、僕としてはどっちかっていうと演技面を売りたい(笑)。出来れば皆さんにそこを知ってもらいたいので、頑張ろうと思っています。

奥村康祐・倉永美沙

−ただ、いつも外国人と踊っている美沙さん的にはどう?外人は日本人より表現豊かというイメージですが。

美沙 外国の人ってすごく情熱的だし、表現力もあるように思われているけど、でも、そこまで細かく精神的なことを突き詰めない。私は、音を細かく割って捉えて、アクセントも決めておきたい。そのことを外国人パートナーに話すと、そこまで細かな準備をするのはクレイジーじゃないか、と言われる。それだけ追求したいのは、日本人特有かもしれません。そういう日本人も少ないかもしれないけど・・・

−今回の公演も、周到に準備をする?

美沙 本番では計算どおりにいかなかもしれないけれど、ここでアクセントをとりたい、こういうふうに回りたい、ここでこんな風に表現したいと事前に考えておくことは絶対に必要だと思います。ただ、今回は全幕なので、相手の出方で自分の出方が変わってくることがある。それが全幕の『味』ですね。

−リハーサルを重ねながらロミオ像、ジュリエット像は変化していきますか?

康祐 ある気持ちを抱いていても、いざ、音楽が鳴って踊り始めたら、全然違う気持ちになったりもします。あれ?って自分で思うけど、自然に流れているし、ま、いいかって。だから毎回ちょっとずつ変わります。
美沙 毎回同じだとおもしろくないし。今回は特にオーケストラなので、音楽の中で、当日どんなロミオとジュリエットになるかわかりません。それまで色々試しながら練り上げていきたいですね。

−美沙さんは普段ボストンバレエ団というプロ・ダンサーの集団のなかで踊っていますよね。でも地主バレエ団公演だとアマチュアの人や学生さんも一緒に舞台に立つ。そこでのストレスはないですか?

美沙 ないですね。ストレスがあるのはむしろボストン。やはり色々プレッシャーがあります。ここでは、みんながサポートし、盛り上げてくれる。とても恵まれた環境で踊らせてもらえて、ありがたいです。通し稽古もボストンに比べ数を重ねられるので、落ち着いて練っていけると思います。

−康祐君にとっては、地主バレエ団公演での初主役ですね。

康祐 幼いころから育ってきた地主バレエで主役を踊れるのは、とても嬉しい。バレエ団はみんな仲が良いので本番は、みんなのパワーが一つになって良い舞台になるはずです。お楽しみに!!(笑)


インタービューを終えて

◆インタビューを終えて

倉永美沙さんとは、彼女がゲスト出演したボリショイ劇場で初めて会った。当時彼女は10歳。小さくて色が黒い(失礼!)女の子だった。2006年にはジャクソンで再会。そのときには色白のレディに変身していて驚いた(またもや失礼)。現地でインタビューした翌日、決選での堂々とした演技に感嘆し、金賞決定の瞬間は、本当に嬉しかった!
奥村康祐君については数年前からそのノーブルな舞台姿に注目していて、今年の春、インタビューをした。論理的にすばやく答える美沙ちゃん、ときにじっと考え込む康祐君、そこに違いはあるけれど、質問を真剣に聞き、真摯に自分の言葉で答えるところは同じ。そして自分の言葉に責任を持つところも。小さなバレエ少女や少年が、プロのアーティストになっていく過程は感動的だ。そしてプロとなった彼らと話をするのは刺激的で、とても楽しい。それが伝われば、と思っている。
桜井 多佳子